懐かしい妄想

築地の職場は窓のない地下、突き当りの一番奥。
雨はもちろん、雷や花火も聞こえない所で週6日指圧をしていました。
院長や社長にはとても良くしてもらったのですが、その環境だけは息が詰まり、空き時間があればよく市場やカフェに脱走していました。
結局2年で一度辞め、海外を2か月ほど旅して戻り更に2年お世話になりました。
ここで指圧をしている時、私はよく妄想していました。
「ここは森の中、下は芝生で周りには緑々とした樹が茂り、鳥がさえずる。気持ちイイ風がそよそよと吹く中で私は指圧している。指圧を受けている方の痛みや辛さを全部私の両手で吸い取って頭から放出する」
誰にも言わなかったこの妄想を一度だけ院長に言ったところ、
「ネガティブなものを自分の身体に取り込む妄想だけはやめておくように」
と注意されました。
その後築地の治療院は閉院、院長も亡くなりました。
今は明るいあんのんでそんな妄想をすることもありません。
あらゆる人のおかげで今がある、感謝を忘れずにいようと思います。