ミャー

TS3W0798
えみは子猫時代「ミャー」と呼ばれ、築地の部屋に遊び(営業、と主人は言います)に来ていました。
最初は、餌は食べるけど警戒心が強くて近寄ると逃げていました。
もちろん私たちはミャーには触ることもできず、ただ朝晩餌をやるだけ。
でもなぜか家を出入りするときに植木鉢の影から見送りと出迎えはしてくれていました。
暖かい季節、当時うちの玄関は日中網戸にしており、ドアはいつも開けっ放し。
やがて夕方ドアを閉めようとすると、ミャーが部屋に入ろうとするようになりました。
「ゴメンね、中には入れられないんだよ」
もちろんペット禁止ですし、ノラだからノミもいるでしょうし、第一、部屋が汚れるのがイヤでした。
餌はあげるけど、室内で飼う気は全くありませんでした。
そんな時、同じくミャーを可愛がっていた隣のおばあちゃんが色々教えてくれました。
「中央区は二年に一度ノラ猫に毒を盛って駆除するのよ」
「あの猫、私には触らせてくれないのにお宅では膝に乗るのね」
そう、ノラだからそんなものかな、と思っていたらある時から突然、ミャーは膝に乗ってくるようになったのです。
そうか、そのうちこの猫も殺されちゃうのか…と複雑な心境になりました。
ミャーは毎日玄関の網戸をグイグイ押して、ついに下から潜って玄関に入って来るようになりました。
「コラッ!」と叱ると、逃げる時も網戸を潜ります。おかげで網戸はベロベロに伸びて台無し。
春~夏は良かったのですが、秋に近づくとだんだん寒くなりました。
ドアを閉めていたある時、鳴き声が聞こえたのでお風呂の窓から外を見ると、
ミャーがガクガク落ちそうになりながら外塀の上から物干しを伝い、こちらの郵便受けにジャンプして来ました。
主人と二人ビックリして見ていたら、
そのままお風呂の窓枠に立ち上がって格子に手(前足)をかけてインベーダーゲームのように立ったまま左右に動きながら鳴くのです。「入りたい、入りたい」の猛アピール!!
これはたまらん、と我々は奥の部屋へ逃げたのですが、今度はその部屋の窓のヒサシに乗ったらしく、ミャーが窓から逆さまに顔を覗かせて鳴いて呼ぶのです。
ただ遊んでいるのか、寒いから中に入れて欲しいのかは分かりませんでしたが、いわば猫のストーカーです。
これには本当にビックリしました。
この猛烈アタックと「毒を盛って殺される」という言葉が気になり、我々は根負け。
ついに家猫となったのがミャー、後にえみという名前になった我が家初めての猫なのでした。