命拾いした話

girls102
以前オートバイに乗っていたころ、何度かヒヤッとしたことがあります。
その中で今でもたまに思い出すのが夏のアメリカでロッキー山脈を越えた時のこと。
3か月間のアメリカキャンプ一人旅もそろそろ終盤、当時コロラド州のフォートコリンズで知人と会った後、ロサンゼルスに向けて私は一人でオートバイに乗っていました。
砂漠地帯や山などでは天候も変わりやすく、夏でTシャツ一枚でもいいくらいの気温から急に真冬のような寒さになったりしますが、三度目のアメリカツーリングで服装などすぐに対応できるように準備していました。
この時はロッキー山脈を登りはじめてしばらくすると雨が降り出し、私はカッパを着こんでの走行を余儀なくされました。
やがて雨が雪に変わりはじめたころ、後ろの車が私のバイクを追い越し、すぐ右脇に停車しました。
「停車するのに人を抜くなんてせっかちな人だなあ」
そのまま進んでいると、また同じ車が私のオートバイを抜き、また脇に停車するのです。
「なにしてるんだろう?」
通り過ぎながら首をかしげていると、またもや同じ車が私を抜き去り、今度は少し先に停車して人が出てきました。おじさんが手を振って私に止まるよう合図しています。
いつでも発進できるようにエンジンを切らず、警戒しながら止まって話を聞くと、
「この先は大雪だからバイクの走行は危険。バイクは自分のトラックの荷台に乗せてやるから一緒に乗っていけ」
ということでした。
その話を聞いている間にも風と雪はどんどん強くなって視界は最悪、私は仕方なく提案を受け入れることにしました。
トラックにはバイクを固定するヒモはありましたが、荷台の高さまで車体を持ち上げるための道具や板などありません。
しかし驚いたことにそのおじさんは私の650CCのバイクを腕の力だけでトラックの荷台に持ち上げてくれたのです。驚くべき力!!
おかげさまで私はカッパ姿のままで助手席に乗せていただき吹雪のロッキー山脈を越え、ふもとの街に着くまでラジオを聴いたり片言の英語で会話をして過ごしました。(ヘルメットを取ったら私が女性だったので驚いていましたっけ。)
おじさんはこれから数十年ぶりにお子さんと再会するんだと話し、本当にふもとの街に着くやいなや私の目の前で感動的な再会を果たされました。
それにしても何という幸運!この方に出会わなかったらあの後私はどうなっていたのでしょう?
思いがけず乗せていただいたトラックのラジオから流れていたのは素晴らしいサックスの音色。あまりにも素敵だったのでテープに録音していた私は、ロサンゼルスに着いてすぐCDを探しに行きました。
そのサックスの演奏者は数年後に日本でもヒットしたケニー・ジーという方。彼の演奏を聴くと、今でも懐かしさと感謝の気持ちが蘇ります。
若いころのやんちゃな思い出、生かしていただいてありがたいと思っています。